元公立中学校の理科の教員です。教員経験は11年。現専門は理科教育学。所持教員免許は中学と高校の理科。
理科の教材や学習法を研究中。さまざまな出版社の理科教材や解説を作成してます。
これらは受験と関連してよく耳にする言葉ですが、その内容を正確に理解している人は多くありません。
調査書
内申書
通知表
この記事では、元中学校の教員である筆者が、調査書・内申書・通知表の違いと高校受験との関連性を解説していきます。
内申点を高めるコツも合わせて解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
まずは、「調査書」「内申書」「通知表」などの言葉の違いを正確に理解することから始めましょう。
調査書と内申書は呼び方が違うものの、同じものを指します。調査書の俗称が内申書となるのです。調査書(内申書)は、入試の選考資料として利用するために、中学校が高校側へ渡す資料となります。
一方で通知表は、学期ごとの成績・出欠・活動の記録が記載されたもので、中学校から生徒・保護者へ渡す資料となります。
・調査書と内申書は同じもの
・調査書(内申書)は、中学校→高校へ渡す資料
・通知表は、中学校→生徒・保護者へ渡す資料
と考えていただければ間違いありません。調査書は受験前に高校へ渡されますが、通知表は各学年の学期ごとに生徒・保護者へ渡されます。
違いがわかったところで、調査書と通知表の内容をそれぞれ詳しくみていきましょう。
まずは調査書について詳しくみていきます。調査書の内容の詳細は、都道府県ごとに異なりますが、大枠は以下のようになっています。
1.基本情報
2.各教科の学習の記録
3.学習時間(出欠)の記録
4.総合的な学習の記録
5.特別活動の記録
6.行動の記録
7.学校行事・部活動などの記録
以下の画像は、栃木県で利用されている調査書です。
出典:高校入試ドットネット
こちらを参考に、調査書の詳細をみていきましょう。
出典:高校入試ドットネット
続いては各教科の学習記録になります。この欄が、調査書において最も重要度が高い項目になります。
評定は、各教科「5・4・3・2・1」の五段階で評価されます。この9教科の評定が内申点に大きな影響を与えます。
評定を内申点としてどのように計算するのかは、都道府県によって異なります。
例えば、3年生の評定のみを内申点として扱う都道府県もあれば、1年生〜3年生の評定全てを内申点に含む都道府県もあります。
詳細は以下の表の通りです。(令和6年度時点の情報です)
都道府県 | 中学1年 | 中学2年 | 中学3年 | 備考 |
北海道 | 90点 | 90点 | 135点 | 9教科×5段階2倍=90点満点 9教科×5段階3倍=135点満点 |
青森 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科×5段階評定=45点満点 |
岩手 | 110点 | 220点 | 330点 | 5教科×5段階評定×2 + 実技4教科×5段階評定 ×3 =110点満点 5教科×5段階評定×4 + 実技4教科×5段階評定 ×6 =220点満点 5教科×5段階評定×6 + 実技4教科×5段階評定 ×9 =330点満点 |
宮城 | 65点 | 65点 | 65点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定 ×2倍 =65点満点 |
秋田 | 65点 | 65点 | 65点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定 ×2倍 =65点満点 |
山形 | - | - | 45点 | 9教科×5段階評定=45点満点 |
福島 | 65点 | 65点 | 65点 | 9教科5段階評定+実技4教科の5段階評定の合計 9×5+4×5 =65点満点 |
茨城 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科×5段階評定=45点満点 |
栃木 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 |
群馬 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科 × 5段階の評定 |
埼玉 | 45点 | 45点 | 90点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 9教科×5段階評定 ×2倍 =90点満点 |
千葉 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 |
東京 | - | - | 65点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定 ×2倍 =65点満点 |
神奈川 | - | 45点 | 90点 | 9教科の5段階評定 9×5 =45点満点 9教科の5段階評定 を2倍 9×5×2 =90点満点 |
新潟 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 |
富山 | - | 45点 | 90点 | 9教科の5段階評定 9×5 =45点満点 9教科の5段階評定を2倍 9×5×2 =90点満点 |
石川 | 45点 | 45点 | 90点 | 9教科×5段階評定 9教科×5段階評定×2 |
福井 | - | - | 45点 | 9教科の5段階評定 |
山梨 | 110点 | 110点 | 110点 | 5教科×5段階評定×2倍 + 実技4教科×5段階評定×3倍 =110点満点 |
長野 | - | - | 45点 | 9教科の5段階評定 9×5=45点満点 |
岐阜 | 45点 | 45点 | 90点 | 9教科の5段階評定 9×5 =45点満点 9教科の5段階評定 を2倍 9×5×2 =90点満点 |
静岡 | - | - | 45点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 |
愛知 | - | - | 90点 | 9教科×5段階評定 ×2倍 =90点満点 |
三重 | - | - | 45点 | 9教科×5段階評定 |
滋賀 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科 × 5段階評価 |
京都 | 65点 | 65点 | 65点 | 5教科を5段階評価 + 実技4教科を5段階 評価×2 =65点満点 |
大阪 | 90点 | 90点 | 270点 | 9教科×5段階評定×2倍 =90点満点 9教科×5段階評定×6倍 =270点満点 ※一般選抜の場合 |
兵庫 | - | - | 250点 | 5教科×5段階評定×4倍 =100点 4教科×5段階評定×7.5倍 =150点 |
奈良 | - | 45点 | 90点 | 9教科×5段階評価 =45点満点 9教科×5段階評価×2 =90点満点 |
和歌山 | 45点 | 45点 | 90点 | 9教科× 5段階評定 =45点満点 9教科× 5段階評定 ×2 =90点満点 |
鳥取 | - | - | - | 高校ごとに異なる |
島根 | 45点 | 45点 | 90点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 9教科×5段階評定×2倍 =90点満点 |
岡山 | 45点 | 45点 | 110点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 9教科×5段階評定×2倍 + 実技4教科×5段階評定 =110点満点 |
広島 | 45点 | 45点 | 135点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定 =45点満点 5教科×5段階評定×3 + 実技4教科×5段階評定×3 =135点満点 |
山口 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科を 5段階で評定 |
徳島 | 65点 | 65点 | 65点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定×2倍 =65点満点 |
香川 | 45点 | 45点 | 130点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 5教科×5段階評定×2倍 + 実技4教科×5段階評定×4倍 =130点満点 |
愛媛 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 |
高知 | 65点 | 65点 | 130点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定×2 =65点満点 5教科×10段階評定 + 実技4教科×10段階評定×2 =130点満点 |
福岡 | - | - | 45点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 |
佐賀 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科 × 5段階評定 |
長崎 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科 × 5段階評定 |
熊本 | 45点 | 45点 | 90点 | 9教科×5段階評定 =45点満点 9教科×5段階評定×2倍 =90点満点 |
大分 | 65点 | 65点 | 130点 | (5教科×5段階評定) + (実技4教科×5段階評定×2) =65点満点 (5教科×5段階評定×2) + (実技4教科×5段階評定×4) =130点満点 |
宮崎 | 45点 | 45点 | 45点 | 9教科 × 5段階評定 |
鹿児島 | - | - | 450点 | 5教科×5段階評定×2倍 =50点満点 4教科×5段階評定×20倍 =400点満点 |
沖縄 | 55点 | 55点 | 55点 | 5教科×5段階評定 + 実技4教科×5段階評定 ×1.5倍 =55点満点 |
参考:47都道府県別 入試情報|進研ゼミ 高校入試情報サイト
このように都道府県によって内申点の計算方法は全く異なります。1年生、2年生の評定が内申点に含まれない都道府県もありますが、それらの地域にお住まいの場合でも、1年生、2年生からしっかりと準備をしていくことが大切です。
なぜなら、1、2年生でサボっていて、3年生で頑張ったからといって、評定は簡単に上がるものではないからです。入試は低学年の時から準備をすればするほど有利になります。早め早めの準備を心がけてください。
また、内申点は実技教科を重視する都道府県が多いことも押さえておきましょう。これは、実技教科は入学試験で課されないため、その分を内申点として重要視する傾向があるためです。
実技教科にも手を抜かずに力を入れることが、入試合格への近道になります。
ところで、中学から高校へと提出される調査書を、保護者や生徒が見ることはできません。もしも自分の内申点を知りたければどうすればいいのでしょうか?
実は調査書の評定は、通知表の評定とほぼイコールの関係になっています。例えばある教科の成績が「1学期=4」「2学期=3」「3学期=4」だった場合は、調査書の評定は「4」である可能性が高いです。同様に「1学期=3」「2学期=3」「3学期=2」だった場合は「3」。「1学期=5」「2学期=5」「3学期=5」だった場合は5であると考えてよいでしょう。
ただし、もちろん多少のズレはあります。通知表の評定も「4に近い3」や「2に近い3」などさまざまだからです。しかし少なくとも、全学期の評定が5であるのに、調査書の評定が「3」といったことはありえないと考えてもらって大丈夫です。
出典:高校入試ドットネット
続いては学習時間(出欠)の記録についてです。
ここには欠席の日数とその理由が記載されます。欠席数に敏感な方もいらっしゃると思いますが、年間10日以下程度の欠席であれば、内申点が下がったりすることはまずないと考えていただいて大丈夫です。また欠席の理由が通常の病欠や、欠席することがやむを得ないと考えられる一般的な事情ならば問題ありません。
しかし病欠以外に、
・年間30日以上の欠席がある
・月に7日以上の欠席がある
場合は、義務教育としては不登校と定められています。
「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。
(出典)文部科学省「不登校の現状に関する認識」
これを高校側がどのように捉えるかは、一概には言えないところです。しかし場合によっては入試に不利になる可能性もあるでしょう。
現在は登校できている状態なのか、高校で人間関係が変われば登校できそうなのか、なども生徒によりさまざまなため、学校側も状況に応じてさまざまな判断をします。
公立高校の募集要項・実施要項では、欠席数が多い場合に「審議の対象とする」と書かれていることがあります。何日以上の欠席で審議の対象になるかは様々ですので、要項を確認してみるとよいでしょう。欠席は少ないにこしたことはありませんが、それほど神経質になる必要はないと考えられます。
ただし、私立高校の推薦入試などの場合は、「各学年の欠席が10日以内」など厳しく設けられているところもあります。
ほか、皆勤だからといって内申点が大きくプラスされることはないと覚えておいてください。コロナ禍ということもあり、体調不良などを感じた場合はしっかりと休ませるほうが子どもや学校のためになるでしょう。
出典:高校入試ドットネット
総合的な学習の記録についてです。こちらは総合的な学習の時間にどのような取り組みを行ったか。また、その成果や意欲などが文書で記入されます。
基本的には多くの生徒が似た内容になることが多く、高校側の重要度は低めです。
出典:高校入試ドットネット
特別活動の記録は、
・学級活動
・生徒会活動
・学校行事
の3つの項目があります。それぞれの項目について、丸をつけるかつけないかの2択になっています。
多くの生徒は、3つの項目の中から1つか2つ印がつくことが多いです。多くの高校は特に重要視している項目ではありませんし、特定箇所に丸がないから減点ということも少ないでしょう。
出典:高校入試ドットネット
行動の記録は、
1.基本的な生活習慣
2.健康・体力の向上
3.自主・自律
4.責任感
5.創意工夫
6.思いやり・協力
7.生命尊重・自然愛護
8.勤労・奉仕
9.公正・公平
10.公共心・公徳心
の10項目の中から特に優れたものに丸がつけられます。学校の通知表についている所も多いのではないでしょうか。
こちらも高校側は参考程度で、内申点に大きな影響はないと考えてください。
出典:高校入試ドットネット
最後は学校行事や、部活動の記録欄です。「部活をしていると内申点が上がる」と言われることが多いですが、多くの保護者・生徒が思っているほど、部活動などで内申点が加点されることはありません。
もちろん推薦入試や、活躍した部活動を高校でも続ける場合などは影響があるでしょうが、一般入試ではおまけ程度と考えていただいて構いません。
前述した評定が圧倒的に大切な項目になります。
以上が調査書(内申書)の解説になります。一言でまとめると、「内申点≒評定」となります。内申点を高めるためには評定を高めることが何よりも大切になります。
通知表とは、先に解説をしたとおり学期末に学校から生徒・保護者へ渡される資料になります。
基本的には、
・学習の記録(観点別評価・評定)
・特別の教科 道徳
・総合的な学習の時間の記録
・特別活動の記録
・行動の記録
・総合初見
・出欠の記録
などの内容が記載されています。つまり調査書の内容とほぼ同じになっています。そのため、通知表を見れば高校へ送られる調査書の内容は大方予想することができるのです。
ここまでの内容で、調査書(内申書)で大切な内容は評定であること。また、調査書の内容は通知表の内容でほぼ決まることを解説してきました。
結論としては、通知表の評定が高ければ、調査書の評定も高くなることになります。では、通知表の評定を高めるにはどうすればよいのでしょうか。
評定を高めるには、以下の3つの項目が大切です。
1.定期テストの点数
2.提出物
3.授業態度
これら3つの項目について、それぞれ詳しく解説していきます。
まずは定期テストの点数です。これは最も大きなウエイトを占めると考えてもらって構いません。おそらく評定の半分以上は定期テストの点数で決まります。それほどに大切なのです。
定期テストは生徒の到達度を測るのに適していますし、客観的に成績をつけられるため、とても大切な指標となるのです。
続いては提出物です。こちらも大切な要素になります。評定の評価の基準として「観点別評価」というものがあります。観点別評価は、
「知識・技能」
「思考・判断・表現」
「主体的に学習に取り組む態度」
の3つの項目からなりますが、「主体的に学習に取り組む態度」を測るには提出物が最適です。定期テストの点数と同様に、客観的な指標となるためです。
評定を高めるのに重要な最後の要素は授業態度です。授業態度は実技四教科で特に大切な要素になります。
一方で、五教科においては、授業態度は大切ではあるものの、そこまで大きなウエイトを占めません。
五教科は座学が多くなる傾向があるため、授業態度が測りにくいことがその要因の一つです。とは言え、重要な要素であることは間違いないため、日々の授業の手を抜くことは避けるようにしましょう。
調査書(内申書)の項目でも解説をしましたが、部活動や生徒会活動が内申点に与える影響は、世間で言われているよりも大きくありません。
ですので、内申点のために部活動を辞めない、勉強を犠牲にして生徒会活動に取り組むなどは、内申点を高める上では効率が悪いと言えるでしょう。
しかしこれは一般入試の話です。もしも推薦入試などを考えているのであれば、部活動や生徒会活動の内容が大きなウエイトを占める可能性は十分にあることには注意してください。
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結論としては、日々の学習や提出物に励み、通知表で良い評定をもらうことが入試突破の近道になります。
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