元公立中学校の理科の教員です。教員経験は11年。現専門は理科教育学。所持教員免許は中学と高校の理科。
理科の教材や学習法を研究中。さまざまな出版社の理科教材や解説を作成してます。
中学生にとっての模試とは、部活動でいうところの「練習試合」のようなものです。模試の経験が豊富かどうかで、今後の学習効率や、入試本番で力が出せるかどうか決まるといっても過言ではありません。
模試を効果的に活用することで、お子さんの勉強に対するモチベーションアップや勉強の効率化が狙えます。無料のものも多くありますので、ぜひ活用を検討してみて下さい。
筆者は公立中学校教員の経験が10年以上あり、現在は中学理科の学習サイトや、登録者4万人の教育系YouTuberとして活動しています。実務経験を元に、中学生におすすめの模試、またその活用法を解説させていただきます!
まずは、模試を受ける中学生がどの程度いるのか見てみましょう。私のYouTube登録者3000人以上にアンケートをとった結果は、以下のようになりました。(中学3年生以上の方を対象にしたアンケートになります。)
このアンケートを元に、模試の受験経験の「ある」「なし」を振り分けると以下のようになります(中学3年生の卒業時点)。
8割近くの中学生は何らかの模試を受けた経験があることになります。
このアンケートは、比較的学習意欲が高い中学生にとったものです。そのため実際の分布はもう少し低くなるかもしれませんが、少なく見積もっても7割以上の中学生は、卒業までに模試を経験していると考えて良いでしょう。
この記事の後半には、模試を受けた中学生の感想も載せていますので、参考にしてください。
続いては、模試を受けるメリットについて解説をしていきます。初めに申し上げた通り、模試とは部活動でいう練習試合のようなもの。
模試には日常の学習だけでは体験不可能な、さまざまなメリットがあるのです。
それぞれ詳しく解説をしていきます。
まず、模試の最も大きなメリットは、志望校までの「距離」を測れることです。この場合の「距離」とは、自分の現在の学力と実際に志望校合格に必要な学力の差を指しています。
通常、校内の定期テストや実力テストでは、学校内の順位を知る程度のことしかできません。もちろんそれがモチベーションアップにつながることもあるでしょう。しかし、志望校に合格するための学力と自分の現時点の学力の開きはどれくらいか、その「距離」を埋めるために今後どれくらいの努力をしなければいけないかは、校内テストだけではわかりません。
模試を受けることで同じ志望校を目指すライバル達と比較した立ち位置や、志望校合格に必要な偏差値から見る「A判定」「C判定」など、具体的な合格の確率が目に見えてわかります。
これにより、勉強のモチベーションアップにつなげることが可能になるのです。また、場合によっては志望校の難易度を上げたり下げたりするなど、柔軟な変更をすることも可能になるでしょう。
さらに、模試を定期的に受けることにより、志望校までの距離の「変化」を、正確に測ることができます。距離が縮まったのか、開いたのか確認することもできるでしょう。これが、模試を受ける最も大きなメリットになります。
このように、模試を受けることで、事前にさまざまな対策が打てるようになります。
続いてのメリットは「受験本番の練習になる」ということです。
模試は、最も受験に近い環境・範囲・難易度で受験をすることが可能です。
特に環境については、通っている学校以外の場所で、他の中学生と一緒に受験する機会を本番までに何回か経験しておくと良いでしょう。
中学生にとって「本番に近い環境に慣れておく」ことはとても大切です。本来はどの場所で受験しようと、周りに誰がいようと自分のテストには関係ありません。しかし、頭ではわかっていても、慣れていないとどうしてもプレッシャーや緊張感に繋がってしまうものです。単純に「慣れる」という意味で、経験を積むことは大切なのです。
また、「テストの時間配分」「問題を解く順番決定」の練習にも模試は効果的です。
模試では明らかに難易度が高い問題が出題される傾向があります。その際の最善手は「後回しにする」ことですが、このような判断も、模試に慣れることで素早くできるようになります。
さらに、初めて行った場所でトイレの場所を先に確認しておく、時計がない場合に備えて腕時計などを持っていく、忘れ物をした場合や会場に遅れた場合はどうすべきかなど、実際に模試で経験したり失敗したりしておくことで、受験本番に同じような状況になっても落ち着いて対処できるメリットもあります。受験本番の予行演習として、模試を経験しておくことは必須です。
なお、最近は、感染症等の影響で、家で受験することが可能な模試も増えています。家だとついつい気分がゆるみがちになりますし、試験監督もいないので時間オーバーしたり調べながら解いたりしてしまう人もいるかもしれません。何より、「本番の予行演習」にならないので、可能な限り模試は指定の会場で受験するようにしましょう。
最後のメリットは得意・不得意の把握です。
学校の定期テストにおいてもある程度の得意・不得意の把握は可能です。しかし、学校の定期テストは担当の先生との「相性が出やすい」という欠点があります。学校のテストは担当の先生が1人で作成するためです。
このため、定期テストでは意外と点数が取れていた教科が、模試ではイマイチだった。ということが起こりやすいのです。もちろん逆のパターンもありえます。
模試や入試本番のテストは、複数の先生方が協力し、さまざまな入試情報を反映したうえで、さらに入念なチェックを経て作成されています。そのため問題作成者個人の個性が現れにくくなっており、模試の成績に表れた点数や偏差値は学校のテストよりも、より受験生の客観的な成績が把握しやすいといえるでしょう。
また、教科ごとはもちろん、単元ごとにも成績や評価が出てくるので、自分の得意・不得意がとても発見しやすいです。複数回受験すればかなり具体的に掴むことが可能になるでしょう。
苦手を潰していくことは、受験勉強の鉄則になります。ぜひ模試を上手に活用して効率よく成績を上げるようにして下さい。
続いては模試の利用の方法について詳しく解説をしていきます。
それぞれ詳しく解説をしていきます。
まずは一度、早めの時期に体験することが大切です。早い時期に受けるほど、「志望校までの距離」「得意・不得意」など自分の現状を把握し、今後に生かすことが可能になるからです。
例えば中学3年生の冬に模試を受けたとしても、「本番の練習」以外のメリットは無くなってしまいます。試験直前になってから慌てても、できることはかなり少なくなってしまうのです。
そして、模試は定期的に、複数回受けることで本当の効果を発揮するものです。自分の成績が伸びているのか、苦手が改善されているかは何度か受けて成績の推移(変化)を見ないとわかりませんよね。
そのためにも、できるだけ早い時期から模試を体験することが得策であり、「まずは一度受けてみる」という姿勢が大切になるのです。
よくある失敗パターンは「しっかり勉強して、自信がついたら受ける」というものです。
これは部活の例に例えると、「公式戦直前まで練習試合をしない」ということです。これでは本当に効率が悪くなってしまいます。厳しいことを言うようですが、「後で受ける」と言い訳するのは「現実を見たくない(今の自分の本当の学力を知りたくない)」だけの可能性も大いにあるのです。
模試で合否が決まるわけではありません。あまり考えすぎず、一度受けてみることが何より大切です。
続いての効果的に利用するポイントは「解き直しを行う」ということです。これは誰もが聞いたことがある勉強法だと思います。私もぜひおすすめしたい勉強法です。
しかし、実際にこの勉強法を行う人はかなり少ないのではないでしょうか。テストが終わってしまえば、どうでもよくなってしまう人が多いからです。
解き直しをしないのは本当にもったいないことです。入試本番以外のテストは全て、自分の力を把握して次に繋げるために行うものです。
しかも模試は実際に自分が本気で悩んで考えた問題です。これを復習に生かさないようでは、せっかくの模試を十分に活用しているとは言えません。
具体的に模試を解き直すときは、問題を自分なりに次のように分けて印をつけ、解き直すとよいでしょう。
◎ バッチリ!もう解かなくても良い
○ 正解はしたがまだ不安
△ 間違えたが、答えを見たら理解できた
× 全くわからない
この中で「○」や「△」を、「◎」にしていくのが効率がよい学習法です。
このようにすることで、自分の苦手を見つけながら、得意に変えていくことが可能になるのです。
最後のポイントは「次の模試の目標を決める」ことです。あまり細かな目標でなく、「C判定をB判定にする」くらいでも十分ですが、可能であれば解き直しを元に苦手教科や単元の克服にも努めましょう。
次への目標は、勉強のモチベーションアップにとても効果的です。
もちろん初めのうちは、テスト結果を分析し、次回に生かしていくことが難しいこともあるでしょう。しかし、これも練習していくことが重要なのです。
模試を受ける → 解き直す → 次回の目標を決める。
このサイクルを中学生〜高校生と繰り返すことで、試験だけにとどまらず、幅広い思考力や応用力、自分なりの学習法が身についていきます。
この経験は社会人になってからもとても役立つものなので、中学生にとって、初めは難しいかもしれませんが、ぜひ取り組んでみて下さい。
以上が、模試の効果的な活用法になります。模試を効果的に活用するには、塾の先生などに相談するのも有効な方法です。
模試を受ける → 解き直す → 次回の目標を決める。
という一連の流れを、塾の先生のサポートを元に行えるようになるのでとても効果的です。
自分にあった塾を探すのは簡単ではありませんが、「塾探しの窓口」では簡単に検索ができ、口コミなども見ることができます。無料で利用できますので、よろしければ活用してみて下さい。
複数の模試を同じくらいの時期に受けた場合、偏差値や合格判定が模試ごとに違うこともありますよね。そのような場合は、「最も成績が悪いもの」を基準に考えるのが安全です。
高校受験に失敗するご家庭でよくあるのが、たまたま成績が良かった模試の結果を基準に、進路を決めてしまうことです。模試を定期的に受けて自分の成績の推移や判定の分布をしっかりチェックし、最も悪かったテストを基準に考えるようにすると、受験に失敗する確率は格段に減ります。
少しでも危険を感じる場合は滑り止めを上手に活用するなどして、受験のリスクを減らすようにして下さい。
では最後に中学生におすすめの模試を紹介していきます。
まずは無料で受けることが可能な模試について紹介していきます。
全国統一テストは、ナガセグループの東進ハイスクール・東進衛星予備校・四谷大塚が主催しています。
誰もが学力を伸ばすきっかけを得られるよう、 年2回無料で実施しています。「全国統一中学生テスト」は、全国区での自分の位置を確認できることに加え、一人ひとりの弱点や、やるべき課題が明確になるため、 学力を伸ばすヒントを得ることができるでしょう。
参考:全国統一中学生テスト
進研ゼミを利用すると、中学1年生から無料でこの模試を受験できます。とくに中学3年生では、3回の受験が可能になります。
自宅で受験するため、入試本番の緊張感などは少なめですが、気軽に受験できるのと同時に県内・地域ごとの順位もできるので、県立高校が第一志望の中学生に向いている模試と言えるでしょう。
Z会通信講座を受講している生徒のための、Z会内模試です。Z会は昔から難関高志望向けのハイレベルな模試を実施しています。
公立の中学校に通っており、この先難関高校を目指したいという場合は、校内順位だけでは現状把握がしにくくなります。
そんな時はZ会の模試が役立ちます。学校内では1桁の順位でも、Z会の模試ではそれほど高い順位ではなかった…。ということも十分にありえるでしょう。最難関高校を目指している場合は受講のうえ受験してみるとよいでしょう。
早稲田アカデミーの主催で行われる『学力診断テスト』(複数あり・有料もあり)は、新学年が始まるまでに前学年までの既習単元の理解度・定着度をチェックできる、新中学1年生~新中学3年生を対象としたテストです。
テスト範囲はこれまでの学習内容すべてなので、短期的な学習成果ではない、総合的な学力の定着度と入試への対応力を測定することが可能です。
会場は早稲田アカデミーの各教室となるので、近くに教室がある方は検討してみることをおすすめします。
駿台中学生テストは昭和44年スタートの伝統があるテストで、難易度が高いテストとして有名です。国公私立難関高校を目指す中学生に特におすすめのテストとなります。
駿台の模擬試験では偏差値が他の模試よりも低い値で出る傾向があります。これは偏差値の算出方法を考えるとわかるとおり、模試を受けている母集団のレベルが高いためです。全国レベルの最難関校を目指す場合はチャレンジしてみることをおすすめします。
5,000円前後で受験することができ、会場受験・自宅受験のどちらも可能です。
参考:駿台中学生テストセンター
「Vもぎ」は中学3年生対象の高校受験模擬テストです(中1・中2は対象外)。受験生の志望校に合わせた「都立Vもぎ」「県立Vもぎ」「私立Vもぎ」が用意されています。また「都立そっくりもぎ」など、より本番の試験に近づけた内容と形式の模試もあります。
主な受験会場は大学・高校・専門学校となっており、広い地域から受験生が集まり本試験と同じスタイルで受験することが可能になっています。模試の雰囲気は本番さながらであり、本番の臨場感を味わえるところが魅力といえるでしょう。料金は5,000円程度です。
「Wもぎ」は、おもに東京都立高校および神奈川県立高校の受験対策に特化した、首都圏最大規模の模擬試験の一つです。
出題内容や問題の書式、出題パターンは「そっくり」に作ってあり、出題問題も過去の受験問題を分析し精選したものになっています。都内および神奈川県の生徒の多くが受験するため、この両都県の中学生にはぜひ受験していただきたい模試です(「私立対策もぎ」「特色検査対策もぎ」もあります)。
なお受験生(中3)だけでなく、中2年生対象の模試もあります。値段はおおむね5,000円前後となっています。
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数ある個別指導塾の中から、自信をもっておすすめできる塾を5つ紹介します。
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中学生が模試を受けるメリット
模試の効果的な利用の仕方
中学生におすすめの模試
について解説しました。模試の利用は早ければ早いほど効果的です。進路の実現に向け、お子さんの現在地を正しく把握し、効果的な対策を打っていくには必要不可欠なものと言えるでしょう。
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