元公立中学校の理科の教員です。教員経験は11年。現専門は理科教育学。所持教員免許は中学と高校の理科。
理科の教材や学習法を研究中。さまざまな出版社の理科教材や解説を作成してます。
高校受験に成功する中学生は、毎日どのようなスケジュールで活動をしているのでしょうか。受験まで1年を切っているのに、お子さんの毎日の過ごし方を見て焦りを感じる保護者の方も多いでしょう。
そのような方へ向け、この記事では高校受験で失敗しないための具体的なスケジュールを紹介していきます。
筆者は10年以上教員の経験があり、現在は学習サイトの運営やYouTubeで教育活動をしています。学習サイトは毎月30万人が利用し、YouTubeの登録者も5万人を超えています。2022年10月には学習参考書も出版しました。私の元には日々学習に関する相談があるため、効率的な勉強法の研究を欠かしません。
この記事は私の経験とYouTube登録者からのアンケートを元に作成させていただきました。この記事がみなさんの受験突破の一助となれば幸いです。
受験勉強において、良いスケジュールを知り、身につけることは非常に大切です。なぜなら受験勉強においてスケジュールと学習時間には密接な関係があるからです。
スケジュールが身につくことは「習慣」とも言い変えることができます。そして、受験の成功に最も大切なのが「学習習慣」なのです。下のグラフを見てください。
これはある中学生の一日のスケジュールです。このスケジュールでは、毎日3時間の学習時間が確保されています。このようなスケジュールを設計し、こなすことができれば受験勉強はすでに成功していると言えます。
受験勉強というと「努力」というイメージが強いです。確かに努力は大切ですが、努力よりも学習習慣の方が重要です。習慣化することで「努力している」という意識すら薄いまま成績が伸びていく理想的な状況をつくれるからです。
スケジュールの大切さを知り、お子さんにあった最適なスケジュールを設計するようにしてください。
まずは中学3年生のおすすめ学習スケジュールを紹介します。学習に集中しやすい時間帯は次の3つです。
①朝(登校前)
②下校後すぐ(夕食前)
③夕食後
これら3つのタイミングのうち、2つ以上に学習に取り組めるスケジュールを組むのが理想です。
学習効果が最も高いのは朝なのですが、中学生にとって朝に勉強することはハードルが高めです。そのため、おすすめは、②下校後すぐ・③夕食後に学習時間をとることです。勉強時間は2時間〜3時間程度が目安になります。
これらをふまえてスケジュール表をつくると、以下のようになります。
このようなスケジュールで学習できると理想的です。特に、下校後すぐに学習に取りかかることができると、まわりと差をつけることができるでしょう。しかし、下校時間は部活動などにより個人差が大きいため、この時間に学習ができない場合は夕食後に多めに学習時間をとるようにしましょう。
学習時間は多いに越したことはありませんが、平日に2〜3時間学習できれば十分な学習量と言えます。
私がYouTubeで受験生を対象に行ったアンケートでは、平日の学習時間は以下のようになっています。
実は受験生でも、3分の1以上は十分な学習習慣がついていないのです。そのため最も大切なことは、0~1時間にならないことなのです。
もしもお子さんに学習習慣がついていないのであれば、
①朝
②下校後すぐ(夕食前)
③夕食後
のうちどこか1つだけでも学習時間にできるよう努力しましょう。1時間勉強できるようになれば、それを2〜3時間に伸ばすことはそれほど難しいことではありません。
まとめると「下校後すぐ」「夕食後」を中心に、2〜3時間の学習時間を入れたスケジュールが最もおすすめになります。
必要な睡眠時間は個人差が大きいです。ですが7時間程度はとるようにしましょう。受験は長期戦ですので、体調管理が大切ですし、夜にたくさん勉強していても、学校でウトウトしていては成績の大幅アップは難しいからです。「寝る間も惜しんで勉強しないと合格できないのでは?」と言う人がいますが、逆効果です。
実際に、超一流といわれる人は睡眠時間を非常に大切にしていることが知られています。たとえば、メジャーリーガーの大谷翔平選手や将棋のタイトル七冠を有する藤井聡太竜王・名人。忙しいスケジュールの中でも高いパフォーマンスを発揮するために睡眠を7時間以上とることは有名です。
続いては休日のスケジュールを考えていきましょう。休日で意識してほしいのは、勉強時間よりも「午前中の使い方」です。
学習効率や集中力は、基本的に起きてから少しずつ低下していくものと考えてください。つまり、午前中に3時間勉強するのと、午後3時間勉強するのでは、午前中に学習をしたほうが学習効率が良いのです。そのため、貴重な午前中の学習時間を逃さないようにすることが大切です。
それを踏まえて理想的なスケジュールを組むと以下のようになります。
学習時間は5時間です。これでも受験生としては十分な学習量といえます。(もちろんこれより多くても構いません)
下の図は私が受験生を対象にとったアンケートの結果です。
「受験生なら5時間くらい勉強して当たり前」と考えてしまいますが、実際には3時間以上勉強できるのは35%程度なのです。
ここでも注意してほしいのは0~1時間が33%いることです。勉強できない中学生は、どんなに時間があっても勉強しないのです。ですので、お子さんによっては無理に5時間を目指すよりも、1時間だけでも毎日継続してできるようになることが大切です。
休日の勉強スケジュールを立てる際には、もう一つポイントがあります。それは「午前中に頭を使う内容を学習し、午後や夜には負担の小さい内容を学習する」ことです。
頭を使う内容を具体的に挙げると
・数学の問題演習
・英語の読解問題
・苦手な教科
などが代表的なものになります。これらの勉強は問題を解く際に考えなければならいないことが多く、頭を使います。そのため、頭が冴えている午前中に学習することで効率が上がります。
その一方で、負担の小さい内容とは
・社会の暗記問題
・国語の漢字練習
・一度学習した内容の復習
・得意な教科
などが挙げられます。これらの内容は、負担が小さく、少ない労力で学習に取り組むことができます。そのため、頭が疲れてきた午後や夜に学習すると効率がいいのです。
これらの負担の少ない内容は、どうしても勉強のやる気が出ないときに取り組むこともおすすめです。
私もYouTubeで勉強の解説動画や一問一答の動画を上げていますが、コメントで「どうしてもやる気がでないので、動画学習だけでも頑張ります…!」という内容のコメントがつくことがあります。
このように、自分にとって負担の少ない勉強を理解しておいて、その学習は、疲れている夜や、やる気が出ない時に取り組むような柔軟性ももてるとよいでしょう。
以上が、休日の学習スケジュールになります。まとめると
・目標は5時間
・午前中が大切
・最低でも1時間の勉強は習慣にする
となります。計画を立てる分には5時間は簡単ですが、実際に行うのはかなり難しいです。ぜひ、試行錯誤をくり返しチャレンジしてみてください。
続いては夏休みのおすすめスケジュールについて解説します。夏休みのおすすめスケジュールは以下のようになります。
先ほど紹介した「休日のスケジュール」と、ほぼ同じになります。基本的には夏休みも、毎日5時間程度の学習時間をとることができれば十分と言えます。
午前中に負担が多い学習内容に取り組むべきということも同様です。先ほどの「休日のスケジュール」との唯一の違いは、起きる時間を30分早めたことです。
人間の体は、必要な睡眠時間が夏は少なく、冬は多くなる傾向にあります(冬の方が30分程度多い)。
そのため夏休みは、早めに起きて学習に取り組むことがしやすい時期ですので、起床時間を少し早めに設定させていただきました。
これは言い変えると、夏休みは午前中の学習の重要度が非常に高いと言えます。夏は生理的に起床時間が早まりやすいだけでなく、気温的にも午前中のほうが集中しやすいです。夏休みの効率的なスケジュールを立てる際は午前中を大切にするようにしてください。
私のアンケート結果では、受験生の夏休みの平均勉強時間は以下のようになっています。
夏休みの勉強の成果は秋〜冬にかけて必ず出てきます。しっかりとしたスケジュールを立て、有意義な夏休みにしましょう。
冬休み中のおすすめスケジュールは以下のようになります。
このスケジュールでは7時間半の学習時間をとっています。最後に追い込みをかけるという意味で、このくらいの勉強時間がとれると理想的です。
冬休みには、過去問に挑戦することもおすすめです。毎日1教科ずつ挑戦してもよいですし、本番と同じスケジュールで5教科解いてみるもよいでしょう。
入試直前に過去問を解く中学生も多いですが、これは良くありません。特に過去問の結果が悪かった場合、自信を失うだけで、改善する残り時間が無いためです。冬休みに過去問を行うと、良くできた場合は自信になり、悪かった場合もそれをモチベーションに最後の追い込みをかけることができます。
冬休みの一日のスケジュールを立てる際は、過去問も意識的に取り入れてみましょう。また、高校受験生の冬休みの平均勉強時間は以下の通りです。参考にしてください。
入試直前のおすすめスケジュールは以下のようになります。
ポイントは「体調管理」です。学習時間をとることも大切ですが、それと同時に「本番と同じリズム」で生活することをこころがけましょう。
特に夜ふかしをして勉強をすることに慣れていると、入試前日に上手にリズムを掴めないことがあります。学習はこれまで勉強してきた内容の総復習をメインとし、規則正しい生活を意識してください。
また、勉強中に「音楽を聞く」「ラジオを聴く」など独自の勉強法をしている中学生も多いですが、本番に近い環境や、無音での勉強も増やしていきましょう。学習環境も本番に近づけることで、当日の緊張感を和らげることができます。
最近ではテストの環境音に近いBGMなども用意されていますので、家がうるさくて勉強に集中できない場合はそのような音楽を流しながら学習すると良いでしょう。
以上がそれぞれの時期ごとのおすすめの一日のスケジュールになります。ベースとなるスケジュールがありつつも、季節や入試までの時期に応じて最適なスケジュールは微妙に変化します。
紹介した内容を参考に、ベストなスケジュールを構築していってください。
続いては、勉強時間を増やすコツについて紹介します。
1.スマホを親に預ける
2.場所を変えて勉強する
の2点を紹介させていただきます。
まずは「スマホを親に預ける」ことです。これは勉強時間を効果的に使う最も有効な方法です。
スマホと集中力に関する研究は非常に多くされています。その結論として「人間は意志の強さでスマホの誘惑に勝つことができない」というものが多く挙げられています。「目の前にあるスマホを我慢する」というのは、ほぼ不可能なのです。机の上にスマホを置くだけで学習効率が下がるという研究もあるほどです。
そのため、スマホは親に預けるべきです。これだけで集中力が段違いに上がります。私自身も家で仕事をしていますが、仕事中はスマホを部屋の外に置いています。集中力が全く違います。
スマホを使わないようにするアプリや道具はたくさんありますが、受験生は小細工はせず、「親に預ける」ことを強くおすすめします。
スマホを預ける以外にも、場所を変えて勉強することもおすすめです。おすすめの場所は、学校や塾の自習室や、図書館です。スマホはできれば家に置いていきましょう。
これらの場所では周りでも勉強している人が多くいるため、自分も勉強に集中しやすくなります。
注意点は「勉強に集中しない友達と一緒に行かない」ということです。始めは「一緒に勉強がんばろう」という気持ちなのですが、ちょっとの休憩の間に話し込んでしまって1時間〜2時間消費する、というのはよくあることです。
学習に集中できる場所は、一か所ではなく複数探しておくと気分転換にもなりますし、一か所が混んでいるときは別の場所を使うこともでき、勉強が捗ります。参考にしてください。
入試前日・当日のおすすめスケジュールを紹介します。
入試前日は、当日のリハーサルだと思って過ごしましょう。つまり、当日と同じ時間に起きて、同じように過ごすのです。学校が休日の場合は、本番と同じ日程で復習を行うとよいでしょう。
また、当日の準備はできるだけ早めに、心に余裕があるときに済ませましょう。「夕食はカツ丼!」などの縁起物も定番ですが、当日に胃がもたれる可能性があります。そのため、個人的には胃にやさしい食事をおすすめします。特にナマモノなどには十分注意しましょう。
受験前夜は11時くらいには布団に入るようにしましょう。夜遅くまで勉強をするのは厳禁です。前日は勉強よりも、「明日、力を出し切る」ことを意識して過ごしましょう。良く眠るためには、日中に運動をしておくのもおすすめです。良い睡眠が取りやすくなります。
緊張によって眠れない人もいるかもしれませんが、横になって目をつむるだけで頭はかなり休まります。「眠れないからダメだ!」とは考えず、「眠れなくてもOK」と安心して横になって過ごすようにしましょう。
当日は6時過ぎには起床し、出かける30分以上前には食事を行いましょう。このようなリズムで行動すると、本番開始直前には頭が働き、出かける前にトイレに行きやすく体調が安定します。
後は本番、力を発揮するのみです!この記事を参考に準備すれば、十分な力を発揮できるでしょう。
計画的な勉強と、必要な勉強時間の確保。その2つが、高校受験突破のカギだとわかりました。とはいっても、中学生が自分の力だけで計画を立て、計画通りに進めることは簡単ではありません。
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