元公立中学校の理科の教員です。教員経験は11年。現専門は理科教育学。所持教員免許は中学と高校の理科。
理科の教材や学習法を研究中。さまざまな出版社の理科教材や解説を作成してます。
高校入試本番までの日数は近づいているのに、合格へ近づいている気はしない…。そのような悩みを抱える保護者の方は非常に多いです。
理想は日々合格に向けて一歩一歩前進していくべきなのですが、なかなか思う通りにはいきません。
・受験に向けて、日々どのように努力をすればいいの?
・受験勉強にはいつ頃から取り組むべき?
・高校受験で失敗しないためのスケジュールとは?
この記事ではそのような疑問にお答えしていきます。受験に向けたスケジュール管理の基本を知り、お子さんの受験合格のお手伝いができれば幸いです。
筆者は元中学校の教員で、公立中学校で11年間勤務しました。現在は毎月30万人が利用する理科の解説ブログや、登録者5万人のYouTubeを運営しています。私のもとには学生や保護者から学習の相談が毎日届きます。それゆえに私は日々の学習法の研究を怠りません。
この記事には、私の経験やノウハウを詰め込ませていただきました。ぜひ参考にしていただければと思います。それでは解説を始めます。
上手にスケジュールを管理できると、受験の成功率は格段に高まります。これは勉強に限らず、仕事や家庭生活すべてに言えることでしょう。
しかし中学生で勉強をスケジュール通りにこなすことができる生徒はごくわずかです。割合としては1〜2割といったところでしょう。(正直、大人でも5割程度ではないでしょうか)スケジュール管理を最初から完璧に行うことは非常に難しいです。しかし、初めは失敗してもいいのです。
計画を立て、それをこなすという経験は中学生にとって必要なものです。それが高校・大学・社会人と積み重なっていくにつれ上手になっていくのです。ですが目の前の高校受験の合否も無視はできません。「中学生にとって学習のスケジュール管理は難しい」と理解しつつも、合格に近づけるためのスケジュール管理を理解し、果敢にチャレンジをしていきましょう。
では初めに、1日の理想的な勉強のスケジュールを解説していきます。結論としては「平日90分以上」「休日2時間以上」の勉強時間があれば、中学生としては十分と言えます。それぞれ詳しく見ていきます。
まずは中学生の平日の勉強時間の平均を見ていきます。「ベネッセ」が2015年に行った「第5回学習基本調査」では中学生の平日の学習平均時間はおよそ「90分」となっています。
この平均は、公立中学校の平均よりはやや多い印象です。基本的には平日に毎日90分勉強していれば、勉強時間としては十分です。
実際に私がYouTubeで3000人以上の中学生にとったアンケートでは、勉強時間の平均は以下のようになっています。
私がとったアンケートでも、平均の勉強時間は90分程度になりそうですが、注目してほしいのは、0分〜1時間未満の生徒が37%いるのです。
つまり私のアンケートでは、「たくさん勉強する生徒」と「ほとんど勉強をしない生徒」の二極化が進んでいることが見てとれます。そのため、毎日90分の勉強が理想ではありますが、それが難しい中学生が4割近く(1・2年生であれば5割以上)いますので、まずは毎日30分でも学習習慣を身につけることが大切と言えるでしょう。
90分の勉強を行う時間帯は「食後」が基本となります。学校の下校時間や家庭環境にもよりますが、食後に学習できる習慣をつけるとよいでしょう。
少数派ですが「朝に学習をする派」の生徒もいます。朝に学習をすることは効率がよいとされていますが、中学生には難易度が高めです。お子さんの生活リズムに合わせた学習時間を決めるとよいでしょう。
休日は「平均2時間以上」の勉強時間がほしいところです。もちろん3年生の夏以降であれば、3時間以上あるにこしたことはありません。
休日の勉強時間に関する大規模な調査はありませんでしたので、私がYouTubeで中学3年生3000人にとったアンケートを見てみましょう。
図のように、平均勉強時間は2時間程度になっています。ここでも注目してほしいのは「0〜1時間未満」が3割以上いることです。つまり休日でも、勉強しない中学生はしないのです。(3年生でもです)
そのため、コンスタントに2時間勉強できるのであれば1日の学習時間としては十分といえるでしょう。2時間勉強できる生徒は、3時間に増やすこともそれほど難しくないこともポイントです。
休日に勉強をするのに最もおすすめなのが「午前中」です。勉強の効率は基本的に起きてから時間が経つほどに下がっていきます。午前中に勉強をする習慣をつけてしまえば、学習だけでなく趣味なども合わせ充実した休日を過ごすことができるでしょう。
もちろん部活動や習い事など、一人一人予定が違うので、予定に合わせたスケジュールを組むことが理想です。可能であれば
・午前が部活の時のスケジュール
・午後が部活の時のスケジュール
・部活が無い時のスケジュール
などを組んでおいて、それに合わせて行動できるとベストです。
続いては長期的な学習スケジュールについて解説をしていきます。まずは中学1年生・2年生に向けた学習スケジュールを解説していきます。
「中学1・2年生から始める受験対策」、そのように考えると特別難しいことをしなければいけないと感じるかもしれません。しかしやることはシンプルです。
それは、毎学期に行われる定期テストにしっかりと力を入れることです。もちろん定期テストと入試問題は傾向が大きく異なります。しかし定期テストが入試問題を解くための基礎力となることは間違いありません。
特に数学・英語には力を入れて取り組む必要があります。この2教科は、1・2年生で穴ができると、3年生で確実にその穴が拡大します。
逆に言えば1・2年生を乗り切ることができれば、3年生の単元も問題なく進める可能性が高くなります。「1・2年生で行うべきは定期テスト対策」。このことを忘れずに過ごすようにしましょう。これさえすればスケジュールに狂いが出ることはありません。
定期テストに力を入れることは、学力面に加え他にもメリットがあります。それは内申点の向上です。
都道府県によるのですが、高校へ送る内申点は1・2年生のものから送るところが多いです。(30以上の都道府県では1・2年生からの内申点が送られます)内申点とは通常「5・4・3・2・1」の評定から計算されますが、この評定に大きな影響を与えるものが定期テストです。
そのため定期テストにしっかりと取り組むことは、学力と内申点を同時に高める一石二鳥の効果があるのです。もちろん日々の宿題や提出物に取り組むことも同様に大切です。1・2年生でサボってしまうと、3年生で取り返すには大きな労力が必要となってしまいます。
ぜひ定期テスト対策に意欲的に取り組んでください。
また、学期末や学年末には学習範囲のまとめも行うようにしましょう。日々の学習に取り組んでいても、どうしても苦手な教科や単元がでてきてしまいます。
先ほども述べた通り、苦手なところは学年を重ねていくにつれ拡大していきます。忙しい現代の中学生にとって、苦手を潰すチャンスはほとんどありません。その数少ないチャンスが学期末や学年末なのです。
このチャンスを逃さないよう、長期休暇前にはしっかりと成績の振り返りを行い、重点的に取り組む教科や単元を決めるようにしましょう。優先的に対策をしたいのは英語と数学になります。
受験へのスケジュールを組む上で、大きなポイントとなるのが2年生の3学期です。この時期は1・2年生の学習の総まとめや、受験勉強を本格化させていくのに非常に大切な時期となります。
それはなぜでしょうか?通常受験勉強の本格化は「3年生になってから」と考える生徒が大半のはずです。しかしそれが落とし穴なのです。
多くの中学生にとって、3年生の1学期というのは非常に慌ただしい時期となります。
・クラス替え
・最上級生としての生徒会活動
・修学旅行などのイベント
・部活動の最後の試合
これらの行事が目白押しになります。「3年生になったら勉強を頑張る」と言っていた中学生のほとんどが失敗に終わるのはこれが理由です。この時期に受験勉強を始められないと、夏休みまでスタートがずれ込む可能性が高いです。
一方で2年生の3学期はどうでしょうか。クラスメイトや先生達にも慣れていることが多く、生活面が安定しています。また、日が短いため下校時間も早い学校が多いです。(4月に比べ1時間程度は早い)また、2年間の中学校生活を過ごし「勉強面で克服しなければならない分野がある」生徒が大半でしょう。
これ以上に受験勉強のスタートを切るのに最適な時期はありません。3年生の夏休みに勉強を始める中学生と比べ、半年早くスタートできるのです。これは点数換算すると、1教科10点。5教科50点程度はアドバンテージが見込めます。(もちろん個人差はあります)
受験勉強のスケジュールを立てる上で、2年生の3学期は大きなチャンスであることを覚えておいてください。
続いては中学3年生が受験へ向けどのように学習を進めていくべきかについて解説をしていきます。
まずは3年生の夏休みまでのスケジュールについてです。先述した通り、3年生の1学期は非常に忙しく、なかなか勉強に集中できる環境にはなりません。ですが毎日最低1時間、できれば2時間の学習時間を確保したいところです。
学習内容に関しては、定期テスト対策に重点を置くことが基本です。3年生で内申点の比率が大きくなる都道府県に住んでいる生徒はなおさらです。
できれば定期テストの対策と同時に、英語や数学の復習を行いたいところです。英語や数学は、1・2年生の復習を行うことで3年生の成績にも好影響を与えます。余裕があれば優先的に取り組んでおくと、今後が非常に楽になるでしょう。
夏休みに入ると、周りの仲間も含めて一気に受験モードが高まります。この夏休みに受験勉強をスタートできない場合は、遅れをとってしまうことは理解しておきましょう。夏休みはここまでの学習内容の総復習をするためのまとまった時間をとれる最後のチャンスです。必ず時間をかけて苦手分野の復習に着手するようにしましょう。
夏休みからは社会や理科の学習の優先度も高まります。一般に成績が上がりやすい教科の順は以下の通りです。
1.社会
2.理科
3.数学
4.英語
5.国語
社会と理科は学習時間に対しての成績の伸び率が大きい教科です。言いかえると、この2教科で点数がとれないことは大きなハンデとなります。夏休みからであれば入試本番までに十分に苦手克服が可能なので、必ずしっかりと取り組むようにしましょう。
各教科の具体的な学習方法は
・【高校受験】入試社会で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試理科で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試数学で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試英語で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試国語で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
の記事も合わせてご覧ください。
また、ここまでの時期に数学や英語の学習に着手できていない場合は急いで復習を始めるようにしましょう。これら2教科は受験勉強の期間が半年以下の場合は成績が伸び切らないことも多くなります。
この時期になると一人一人優先すべき科目も異なってきますので、社会・理科を中心に学習に取り組むようにしましょう。国語は成績を伸ばすことが最も難しい教科です。漢字や慣用句・古文漢文の基礎に取り組みながらも、他の教科に時間をかけたほうが効率が良いことも多いので、時間配分に注意しましょう。
最後に、夏休み中に入試問題の過去問を1年分で良いので解いてみることをおすすめします。入試本番の難易度を把握しておくと、今後の勉強に活かせる点が多いためです。
夏休みを終えると、授業が再開されます。毎日の授業の復習と受験勉強を並行して行わなければならないため忙しい日々になることでしょう。
しかし学校行事などは9月ころに学園祭がある程度で、それ以外は勉強に集中できる環境が与えられます。残された時間を有効に使いましょう。基本的には冬休み前までに、全教科・全範囲の学習を一通り終えることが目標です。それができれば年始から復習が甘い範囲に力を入れることができるでしょう。
もしも秋までに受験勉強をスタートできなかった場合は、全教科の学習を十分に終えることは難しいと考えましょう。優先順位をつけて学習を進める必要があります。基本的には成績が伸びやすい社会と理科に力を注ぐことがおすすめです。また、英語・数学の基礎も固めておきましょう。
英語や数学は点数が伸びにくいですが、80点の教科を100点にするよりは、40点の教科を60点にするほうがはるかに簡単です。基礎を固めるとテストで大失敗をしなくなります。秋には大規模な模試も全国で行われますので、それらの結果を見ながら力を入れるべき教科を決めていきましょう。
また、冬休み中にも入試の過去問に取り組むと良いでしょう。できれば入試と同じ時間帯に同じ教科の順番で取り組むとよいです。過去問で経験を積んでおくと、本番での思わぬミスを減らすことができます。また、過去問の結果が悪かったとしても残りの数ヶ月の学習意欲の向上に繋がります。ぜひトライをしてみてください。
入試直前はこれまで学習した内容の総まとめを行いましょう。新しい参考書や問題集に手を出すことは禁物で、いままで取り組んできたものの復習に力を入れるとよいでしょう。
生活リズムを整え、体調管理や本番に合わせた環境づくりも行っていくとよいです。本番直前まで成績は上がりますので、無理をする必要はありませんが、最後まで手を抜くことなく学習に力を入れましょう。
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