元公立中学校の理科の教員です。教員経験は11年。現専門は理科教育学。所持教員免許は中学と高校の理科。
理科の教材や学習法を研究中。さまざまな出版社の理科教材や解説を作成してます。
高校受験の結果は、3年生になるまでに5割程は決まってしまいます。もちろん3年生からの怒涛の追い込みで間に合わすことができる生徒もいるのですが、そのような生徒は多くありません。
なにより3年生になってから慌てるよりも、1年生から準備をしておくほうが安心、安全に志望校に合格できることは言うまでもありません。
「受験勉強にはフライングもスピード違反も無い」、これは東進ハイスクールの講師である林修先生の有名な言葉です。つまり周りの生徒に合わせずに、1年生のうちから受験対策を行うことには多大なメリットがあるのです。
筆者は公立中学校で教員を11年間行なっていました。生徒の3年間の成長を見続け、どのような準備や対策が重要か身を持って体験してきました。現在は退職をしていますが、教員の経験を生かし、登録者5万人の教育YouTuber、月間アクセス数30万回の学習サイトを運営しています。22年10月には学習参考書も出版しています。
このような経験を持つ筆者が、中学1年生から可能な効果的な高校受験対策を紹介させていただきます。この記事が参考になり、受験突破の一助としていただければ幸いです。それでは解説を始めます。
まず理解していただきたいのは、学習習慣の大切さです。受験勉強というと、毎日必死に勉強をするイメージが強いでしょう。
しかし成績上位をとる生徒は、以外にも必死に勉強をする生徒はそれほど多くありません。なぜなら成績上位者は「習慣として勉強をしている」からです。言い変えると、食事や入浴とおなじイメージで、淡々と勉強をしているのです。努力しているという感情も希薄です。
多くの中学生が「毎日頑張ってお風呂に入っている」という感覚が無いように、成績上位者の勉強も「毎日頑張っている」という感覚ではないのです。努力する感覚は薄いのですが、当然成績は高まります。それにより勉強をする楽しさや満足感を得ることができ、ますます成績は高まるのです。
3年生になるころには、1年間では絶対に取り返せないほどの差がついているのです。勉強を習慣とすることのメリットは非常に大きいのです。しかし勉強を習慣化させることは簡単ではありません。普通の公立中学校であれば、学習習慣がある生徒は1〜2割ほどでしょう。
学習習慣をつけることは簡単ではありませんが、基本的なコツは以下の通りです。
・時間と場所を決める
・とりあえず勉強を始める
・手をつけやすい教科から始める
・他の習慣と結びつける
・学習記録をつける
「【中学生】家庭学習で勉強の習慣を身につける5つのコツを解説」の記事ではより実践的な内容を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
続いては中学生の平均的な学習時間を確認してみましょう。2015年に行われたベネッセ教育総合研究所の「第5回学習基本調査」では、中学生の家庭学習の平均勉強時間は90分とされています。
また、私がYouTubeを利用して中学生3000人に行なった独自のアンケートになります。
ここで注意してほしいのは、3割程度の中学生は勉強時間が1時間未満であることです。2時間以上勉強する中学生は3割~4割程度いますので学習習慣は二極化していると言えるでしょう。
そのため学習習慣が無い生徒は、まずは毎日30分でも習慣づけを行うことが大切です。特に1年生の内は「入学当初」「初めてのテスト」「夏休み」など学習を習慣づけやすいタイミングがいくつかあります。
初めは大変ですが、非常に多くのメリットがありますので、ぜひ学習習慣を身につけられるようチャレンジをしてみてください。
続いては、1年生からの受験対策としてできることの具体的な内容について紹介をしていきます。
結論としては「定期テスト対策に力を入れる」ことが最大の受験対策になります。なぜなら、定期テスト対策には以下の2つの大きなメリットがあるからです。
1.単元の基本的な内容を身につけることができる
2.内申点を高めることができる
これら受験成功に欠かせない2つの要素を同時に満たすことができる、一石二鳥の効果があるのです。具体的に解説をしていきます。
定期テスト対策に力を入れるメリットの1つ目は、単元の基本的な内容を身につけることができることです。
定期テストは基本的に、入試問題と比べかなり基礎的な内容が出題されます。言い変えると、単元ごとの大切な問題が詰まっているということです。つまり受験に向けての健康診断を行なっていると考えてよいでしょう。テストごとに結果が返却されますが、平均点を下回った教科は早めの対策が必要です。
放置しておくと3年生になってからでは取り返しがつかないことになりかねません。
反対に、毎回の定期テストで良い成績をキープし続けることができているのであれば、3年生になって困る可能性は低いです(志望校の難易度にもよりますが)。定期テストを柱に、基礎力をしっかりとつけていくことが、受験直接に役立つ力となるのです。
家庭学習は毎日習慣にして行うことが理想ですが、習慣づいていない生徒もどんなに遅くとも定期テストの2週間前には学習を開始しましょう。これが本当に最低ラインです。できれば1ヶ月前には開始したいところです。(筆者が行ったアンケートでは以下の通り)
毎回の定期テストを大切にし、受験に大切な基礎力を身につけていってください。
定期テストに力を入れることには、受験の基礎力をつける以外にも大きなメリットがあります。
それは「内申点を高めることができる」ということです。内申点とは中学校の先生が作成し、志望する高校へと送られるものです。基本的には通知表の「5・4・3・2・1」を元につくられます。
つまり、入試当日の時点で、受験生の持ち点はすでに違うということです。もちろん内申点が高いほど、入試当日にとるべき点数は少なくなり、合格しやすくなります。その内申点に最も大きな影響を与える項目が、定期テストの点数なのです。定期テストで高得点をとれば、「3」以上の評定がつきやすくなります。
定期テストの勉強に力を入れることは、基礎力を高めると同時に、内申点を高めることにもつながる一石二鳥の取り組みなのです。
特に日本の半数の都道府県では、1年生からの内申点が高校へと送られます。これは1年生の時点で高校受験が始まっていると言ってもよいでしょう。住んでいる地域の内申点の内訳は必ず確認しておきましょう。
東京などは高校へ送られる内申点は3年生のものだけですが、それでも1年生からの積み重ねが大きな影響を与えるのは言うまでもありません。1年生のうちから定期テストに力を入れ、内申点を高める努力をしましょう。
また、定期テスト以外に内申点に大きな影響を与える代表的なものは
・授業への出席率
・授業態度
・提出物
などになります。特に「美術」「体育」「音楽」「技術・家庭科」などの実技強化は、これらの項目の比率が高いです。日々の生活も高校受験対策の1つと考え、意欲的に取り組むようにしましょう。
定期テストで点数をとるためには、効率的な勉強法も身につけていく必要があります。とはいえ、定期テストの学習法は単純です。それは「学校指定のワークを何周も解く」というものです。
学校指定のワークに取り組むメリットは以下の通りです。
・難易度が適切
・テスト範囲がわかりやすい
・先生に質問しやすい
・テストにそのまま出る可能性がある
・提出物として提出する可能性がある
などのメリットがあります。勉強が苦手な生徒は、本屋で易しいものを購入する方法もあります。しかし多くの生徒は学校指定の問題集で大丈夫です。
また、学校から配布されるテスト範囲には、指定の問題集の範囲も載っていることがほとんどで、テスト範囲を間違えにくいです。指定の問題集なので、先生に問題の質問もしやすいです。
さらに、テスト後にテスト範囲のページを丸つけし、先生に提出することも多いです。内申点も稼ぐことができて非常に効率がいいです。
学習法の基本として「同じ問題集を何度も解くことが効率がいい」というのは基本です。勉強は問題集を1冊にしぼり、くり返し取り組むことが基本なのです。しぼるべき1冊は、学校指定の問題集が最適なのです。
くり返し解く際に効率を高めるためには、1周目を解いた時に問題に印をつけていくことが大切です。
◎ カンペキで、もう解かないでよい問題
○ 解けたがもう一度解きたい問題
△ 解けなかったが、答えを見れば理解できた問題
× 解けずに、答えを見ても理解できない問題
このように問題を解きながら印をつけていくことが大切です。そして、2周目以降は○・△の問題を中心に解いていきます。これらの問題を◎にすることで、成績は高まります。
3周目・4周目・5周目となるにつれて、◎の問題が増え、一周するのに必要な時間が短くなります。最終的には、全ての問題が◎になることを目指します。×の全く理解できない問題は、後回しにすることが基本です。この問題に時間をかけてしまうと、勉強が嫌になってしまいます。
できそうな問題を完璧にしていくことが早道です。○・△の問題を◎にしていくにつれ、×の問題の理解も高まっていきますので、心配しないでください。これが、定期テストの勉強の基本になります。
問題集につける印は、将来的には自分でアレンジをしてもらって構いません。勉強を継続することで、勉強がより上手になっていきますので、ぜひ紹介した基本の勉強をもとに、自分だけの勉強法を見つけていってください。
1・2年生の勉強をする際に、特に注意をしてほしいことは、英語と数学には特に力を注ぐことです。理由は簡単で、これら2教科は苦手になってしまうと克服が困難だからです。数学・英語は、1年生で穴ができてしまうと、その穴が2年生・3年生になるにつれて必ず大きくなります。
一方で理科と社会は、1年生の穴が2・3年生には引き継がれません。「聖徳太子を理解していないと、織田信長を理解できない」ということは無いはずです。
しかし数学は、一次方程式でつまずくと、2次方程式は理解できません。しまいには、何がわからないかもわからなくなってしまいます。このようにならないためにも、英語と数学は苦手にならないよう、特に注意をして学習をしていくようにしましょう。
理科と社会は最悪3年生になってからでも間に合わすことが可能です。とにかく英語と数学は苦手にならないよう意識をしながら取り組むようにしましょう。
各教科の具体的な学習方法は
・【高校受験】入試社会で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試理科で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試数学で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試英語で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
・【高校受験】入試国語で点数をとる最も効率的な勉強法を解説
の記事も合わせてご覧ください。
模試は、1年に1度は模試にもチャレンジをするとよいでしょう。模試では定期テストでは知ることができない全国レベルの立ち位置を把握することができます。
私が中学3年生3000人にとったアンケートでは、59%の生徒が模試を受けたことがあると回答しました。
模試を受けることで、自分の得意・不得意をより確実に把握することができます。
定期テストでも、得意・不得意は把握することが可能です。しかし定期テストは担当の先生の性格が色濃く反映されるテストです。極端に言えば、テストが簡単な先生もいれば難しい先生もいるのです。模試も種類によって難易度は変わりますが、多くの先生が協力してつくるため、バランスがよい問題になっています。
また、他校の生徒と実力を把握できることも模試の魅力です。これがモチベーションにつながることも多いので、気になる人はぜひ受けてみるといいでしょう。
模試のもう一つの魅力は、志望校までの距離が具体的にわかることです。模試では志望校までの距離が、判定として返ってきます。
仮に3年生の秋に模試を受けたとして、判定が「E」であれば通常は諦めるしかありません。(E判定とは合格率0~20%とされることが多いです)
ですが1年生であれば、どのような判定であっても巻き返すことは十分に可能です。可能性に満ちた1年生だからこそ、模試を受けるメリットは大きいのです。
模試については以下の記事で詳しく解説をしていますので、参考にしてください。
これで「高校受験に向けて中学1年生からできること」の解説を終わります。この記事のポイントは以下の通りです。
・学習習慣を身につける
・定期テストに力を入れる
・模試にも挑戦する
これらのポイントを押さえながら生活を送ることで、3年生になったときには周りと大きな差をつけることが可能になっているはずです。
とは言え、3年生に向けてバッチリ準備ができる中学生は多くはないでしょう。そのような際は、塾を利用することもおすすめできます。塾を利用すれば、塾の授業時間に強制的に学習をすることができますし、定期テスト対策や模試の手続きもしてくれるところがほとんどです。
「塾探しの窓口」を利用すれば、一人一人に合った塾を簡単に検索することが可能です。無料で利用可能ですので、ぜひご活用ください。この記事が参考になり、みなさまの受験突破の一助となれば幸いです。