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総合型選抜と、旧AO入試や学校推薦型選抜との違いを解説
「総合型選抜」は、旧AO入試の制度が2021年度から変更されたものです。旧AO入試と似ている点もありますが、変更されている点もあります。
この記事では「総合型選抜」について、旧AO入試との違いや主な選抜方法、合格する秘訣を詳しく解説します。
一般選抜以外のチャンスを上手に活用し、合格可能性を高めるヒントとして活用してください。
総合型選抜とは?
総合型選抜とは、旧AO入試の選抜方法や目的を継承した入試制度です。一般選抜は筆記試験の点数で受験生を選考しますが、総合型選抜は受験生のもつ能力や人物像、大学・学部との適性(アドミッションポリシーとの合致)などを総合的に評価して選考します。
そのため試験内容は主に一次試験は書類審査、二次試験は面接・口頭試問、大学からの課題にもとづくプレゼンテーション、小論文などが主になります。学科試験や英語でのプレゼンテーションなどが課される大学もあります。総合型選抜は一般選抜や学校推薦型選抜(後述)と違い、大学が受験生を多面的に判断し選抜することが目的です。
一方、旧AO入試は国立大学の73.2%・私立大学の86.0%(2020年度入試)で実施された代表的な入試方法の1つです。
受験生の能力や適性、意欲、目的意識などを、書類審査・面接などを組み合わせて総合的に評価・判定していました。2021年度入試からは「総合型選抜」と名称を変え引き継がれています。
旧AO入試は学力評価なしでも合格できたため、AO入試合格生の入学後の学力が十分でなく、大学の学びで脱落するケースが続出し問題視されるようになりました。
その問題を解決するために、総合型選抜に変更された経緯があります。現在、実質的にAO入試はなくなりました(ただし、一部大学では現在も「AO入試」の名称や選抜方法を採っているところもあります)。
総合型選抜と旧AO入試との変更点
総合型選抜は旧AO入試と具体的にどこが変更されたのでしょうか。ここでは総合型選抜と旧AO入試の違いを解説します。
(1) 総合型選抜になって変わったポイント
・学力を測る大学独自の選抜方法が採られるようになった
「大学の学びについていけない学生」の増加を解決すべく導入されたのが総合型選抜です。
総合型選抜では大学が実施する選抜(試験など)の評価も必要となります。なお評定が必要か不要かは、大学・学部・選抜方法によって異なります。
● 大学入学共通テストを利用
・日程(試験日から合格発表のスケジュール)が変更された
AO入試 | 総合型選抜 | |
出願時期 | 8月以降 | 大学が自由に設定 |
合格発表時期 | 9月以降 | 11月以降 |
日程面でも変更がありました。上記のとおり、旧AO入試に比べて総合型選抜のほうが全体的に「日程が後ろ倒しになっている」ことがわかります。高校での学びにじっくり取り組んでほしいという願いが込められていると考えられます。
(1) 大学が欲しい学生像を示す「アドミッションポリシー」
旧AO入試と同じく、総合型選抜でも、受験生を選抜する際には「大学のアドミッションポリシーとの適合度」がチェックされます。
アドミッションポリシーとは「入学者の受け入れ方針」といい、大学が入学してほしい学生の姿を明文化したものです。
(2) 相性重視の入試は入学後のミスマッチを防ぐ
大学はアドミッションポリシーを通じて、来てほしい学生像を明確にします。一方、受験生はアドミッションポリシーを見ながら「自分が目指したい学生像とは一致するか」「自分はこの大学に適合するか」を考え、受験を決めます。
大学のネームバリューや偏差値だけで受験を決めるのではなく、相性を十分考慮した上での受験は、入学後のミスマッチを防ぐ効果があります。
総合型選抜(旧AO入試)とその他の入試方式との違い
現在、大学入試には総合型選抜(旧AO入試)以外にも入試方法があります。おもな入試方法と、総合型選抜との違いをまとめました。
(1) 学校推薦型選抜(指定校制)との違い
総合型選抜は、希望すれば基本的に誰でも出願できます(出願条件は満たす必要あり)。
一方、学校推薦型選抜(指定校制)は「大学が定める出願条件をクリアし、かつ高校長の推薦が得られる受験生のみ」が受験できる点で異なります。一般的に言われるところの「指定校推薦」にほぼ当てはまります。
高校内の選抜を通過・受験できればほぼ100%合格が保証される点で、総合型選抜とは異なっています。
総合型選抜も、実質倍率は一般選抜より低く合格しやすい傾向がありますが、受験すれば必ず合格できるわけではありません。また総合型選抜でも、人気大学・学部の倍率の中には数倍~10倍程度になるところもあり、不合格も十分あり得ます。
なお、同じ学校推薦型選抜に「公募制」もあります。こちらはいわゆる「自己推薦入試」になり、指定校制とは出願条件が異なるため注意が必要です。
(2) 一般入試との違い
総合型選抜も一般入試も、受験を希望すれば誰でも受験できます。ただし、以下の点で違いがあります。
総合型選抜 | 一般入試 | |
入試日程 | 10~11月 | 2~3月 |
試験科目 | 面接、口頭試問、小論文、 プレゼンテーションなどが多い | 主に学力試験 |
評価方法 | 多面的に評価 | 点数で評価 |
総合型選抜(旧AO入試)の試験内容
総合型選抜で課される試験内容を解説します。一般的には「書類審査」「当日の試験(面接・小論文など)」で合否判定されますが、大学によって個性的な試験を課す場合もあります。
また、共通テスト受験が必須のものや評定平均が必要なものもあります。詳しくは必ず各大学・学部の募集要項でご確認ください。
(1) 書類審査(1次選考)
総合型選抜では1次選考として書類審査が行われることがほとんどです。「書類」とは志望理由書や調査書、大学が課す課題(2次選考での面接やプレゼンテーションに必要となるもの)などを指します。
この書類で大学側はアドミッションポリシーや求める基準への到達度をチェックします。提出した書類の内容が大学の定める基準に到達していない場合は、書類選考で不合格になる場合があります。
また、共通テストの受験結果を評価に利用する方式もあります。共通テスト利用型の総合型選抜は、合格発表が1月下旬~2月上旬となります。
(2) 当日の試験(2次選考)
書類選考をパスできたら、次のような大学別試験に望みます。
- 面接
- 小論文
- プレゼンテーション
- ディスカッション
- 口頭試問
- 実技
- 学力検査 など
大学・学部・学科によっては、日本語だけでなく英語・その他の言語で行われることもあります。
総合型選抜(旧AO入試)の実施例
総合型選抜の実施例を紹介します。旧AO入試を日本で初めて実施した慶応義塾大学と、国立大学の代表として東北大学・私立大学の代表として関西大学の例を見てみましょう。
※ 各大学の情報は2023年度入試のものです
(1) 慶応義塾大学
慶応義塾大学は、1990年に日本で初めてAO入試を実施しました。
現在は「総合型選抜」として、以下の入試が実施されています。
学部 | 名称 | 試験科目 |
文 | 自主応募制による 推薦入学者選考 | 小論文(120分・60分の2つ) |
法 | FIT入試 | 1次選考:書類審査 2次選考:論述試験・口頭試問/ 総合考査・面接(方式による) |
理工・総合政策・ 環境情報・看護医療 | AO入試 | 1次選考:書類審査 2次選考:面接 |
複数の入試方式があり、方式によって出願資格が異なる学部もあります。自分がどの方式に出願できるか、事前にしっかり確認しましょう。
(参考)慶応大学 入試制度
(3) 関西大学
大阪府にあり「関関同立」の一角である関西大学では、各学部5~10名をAO入試で募集しています(関西大学も東北大学と同様、「AO入試」の名称のまま実施しています)。
すべての学部が1次選考を提出書類で行い、学部のアドミッションポリシーに則った試験内容で2次選考が行われます。
2次選考の試験内容の例は、次のとおりです。
- 法学部:英文資料の読解、面接 など
- 文学部:小論文、面接 など
- 商学部:面接・口頭試問 など
- システム理工学部:課題レポート、プレゼンテーション など
- 化学生命工学部:セミナーを受講しレポートを提出、面接 など
(参考)関西大学 AO入試
総合型選抜(旧AO入試)の倍率傾向
旧AO入試の、最終実施年度(2020年度入試)の倍率は次のとおりでした。
- 国公立大学平均:3.5倍
- 私立大学平均:2.4倍
ただし、実際の倍率は大学・学部によって幅があります。高倍率大学・学部の一例は次のとおりです(すべて2020年度入試)。
- 早稲田大学商学部:22.0倍
- 同支社大学スポーツ健康学部:13.0倍
- 関西大学制作創造学部:11.8倍
(参考)旺文社パスナビ
また募集人員の増減や受験方式の刷新など、AO入試の倍率は自身以外の入試要素の影響も受けていました。
この動向は総合型選抜に変わっても続いているため、社会情勢まで含めた最新動向のチェックが欠かせないといえます。
総合型選抜(旧AO入試)に合格するコツ
得点によって明瞭に合否が分かれる筆記試験(ペーパーテスト)と異なり、総合型選抜では「大学にアピールできる(合格しやすい)成績と実績」を持つことが合格への近道です。
総合型選抜で合格するコツを3つ解説します。
(2) 特筆できる実績をつくっておく
総合型選抜は、ペーパーテストではわからない「受験生の強み・個性」を見出す目的で実施されています。したがって誰にも負けない強みや特技を持つ受験生は、合格しやすいといわれます。
ただし個性的な特技も、大学のアドミッションポリシーとかけはなれていては合格には近づきにくいでしょう。
志望大学が求める学生像をよく確認し、自分のどの面を伸ばせば大学とのマッチング度が高まるか考えてみてください。
(3) プレゼンテーションやコミュニケーションのスキルを高めておく
旧AO入試と同じく、総合型選抜では面接や口頭試問、プレゼンテーションなど「大学の面接官と直接対話するシーン」が設定されます。
これらは試験でもあり、自分をアピールする絶好の場でもあります。自分の言葉で落ち着いて話せる受験生の方が、大学に好感を持たれやすいです。
緊張をコントロールし、冷静に話す練習を重ねておきましょう。
総合型選抜(旧AO入試)に関するQ&A
一般選抜と異なる入試方式である総合型選抜には、受験生からさまざまな疑問が寄せられます。代表的な5つの質問を、わかりやすく解説します。
(1) 総合型選抜と学校推薦型選抜、受けるならどちらがいい?
A.高校の成績が優秀なら学校推薦型選抜を狙うとよいでしょう。高校内の選考突破が難しそうで、大学とのマッチングが良いなら総合型選抜がおすすめ
学校推薦型選抜には「推薦基準」があり、調査書の評定が基準に達している必要があります。また高校長の推薦書も必要なため、授業態度や活動実績も高校が「推薦に足る」と判断できることも重要です。
一方、総合型選抜は「受験生の人物像」がおもな評価対象になります。大学入学後のビジョンや将来の目標が明確なら、総合型選抜が向いているでしょう。
(2) 総合型選抜は誰でも受けられる?
A.出願要件を満たせば誰でも出願できます。
大学が定める出願要件は、募集要項に書かれています。総合型選抜では基本的に高校長の推薦書は不要なため、条件を満たしていれば誰でも出願できます。
総合型選抜の出願要件は「意欲」「将来の目標」「経験・実績」などが主な項目となり、評定基準はほとんど設定されません。
(3) 総合型選抜はかならず合格できる?
A.合格が保証された入試ではありません。
大学入試で「出願すれば合格確実」といわれるのは、学校推薦型選抜(指定校制)のみです。総合型選抜は、合格できるかどうかは試験を受けてみないとわかりません。
総合型選抜の倍率はおおむね2~3倍となっていますが、人気大学・人気学部になると10倍を超えるところもあります。決して入るのが楽な入試ではない点を押さえておきましょう。
(4) もし総合型選抜に落ちたらどうする?
A.気持ちを切り替え、一般入試で受験しましょう。
総合型選抜は多くは専願となっていますが、併願できる大学もあります。また合格発表も一般入試に先立って行われるため、万一不合格だった場合は一般入試でチャレンジすることになります。
総合型選抜は必ず合格できるとは限らないことを踏まえ、一般入試対策も並行して進めるようにしましょう。
(5) 総合型選抜に受かりやすい人、受かりにくい人の傾向は?
A.際立つ個性があり、大学入学後の目標が明確な受験生が受かりやすいと言われますが、現在では学力やそれに基づく発表の力なども総合的に判断材料とされます。
大学は総合型選抜を通じ、志望分野に対する意欲が高く将来の目標が明確な学生を見つけたいと思っています。当然、大学のアドミッションポリシーに合う受験生である点も欠かせません。
これらの条件を満たす受験生は受かりやすく、反対に「意欲が感じられない」「目的意識が希薄」な受験生は不合格になりやすいようです。
また評定が不要な大学であっても、高度な内容のレポート提出や学科試験、外国語によるディスカッションなど、大学での研究の基礎になる学力が備わっているかも見られます。
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まとめ
この記事では、総合型選抜と旧AO入試との変更点や違いについて解説しました。
基本的に学力不問だった旧AO入試と異なる点はいくつかあり、特に大学の求める学力が必要なところが多くなっています。学力の計測は一般選抜と異なり、多面的に行われます。
しかし「求める学生像に合致する学生を集めたい」「学力検査ではわからない個性ある受験生を見出したい」という主旨は、旧AO入試から一貫して同じです。
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