数学を得意に!『計算トレーニング』の手順を詳しく解説

更新日 2024.01.17
数学を得意に!『計算トレーニング』の手順を詳しく解説

中学生の勉強相談の中でも、「数学の計算」に関するものはかなり多くお聞きします。「どうせ間違えるもん」と計算練習を避けたがるお子さんも多く、その結果、数学の成績が伸び悩むという悪循環に陥ることも少なくないようです。

今回は、計算が得意になれるトレーニング方法について、詳しく解説します。計算の重要性をはじめ、どんな問題をどの順番で進めるべきか、途中式はどれくらい書くべきか、計算ミスをなくす方法は?など、困りやすいポイントも網羅しました。

それでは、そもそも「計算力とは一体何なのか?」という疑問を考えるところから始めていきましょう。

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数学が苦手になる原因「計算力」、その正体とは?

計算は数学の「論理」が詰まった、とても奥深い分野
計算は数学の「論理」が詰まった、とても奥深い分野

計算力は数学の土台となる力ですが、どんな力かというのはあまり知られていないようです。“ホントの計算力”とは一体、何なのでしょうか。

数学が苦手になる原因「計算力」、その正体とは?

(1) 計算力と数学にまつわる誤解

計算というと、公式や暗算を思い浮かべる方も多いかもしれません。たしかに公式の暗記や暗算は、決まったやり方で素早く計算したい時には便利なツールです。

しかし、公式や暗算を使って手早く効率良く計算することだけが数学だ、と考えるのは早計です。それでは、本来数学を通じて得られるはずだった、もっともっと大きな力をみすみす逃してしまいます。

(2) 本当の計算力とは「論理力」のこと

もう少し具体的に考えてみましょう。

途中式を書きながら計算している様子をイメージしてください。前式の計算結果を、イコールでつなぎ、後ろに書いていきますよね。それを繰り返し、欲しい結果を最初の式から導くのが「計算」です。

最初の式から最後の式(数値)を、「順を追って」求めている、ここが大事です!

計算する時、私たちは考え始めの地点から、求めたい答えまでの「道筋」を作りながら進みます。この「道筋をつくる」という考え方こそ、数学で身に付く「論理の力」そのものなのです。

(3) 数学は論理の学問

近年、「論理の力」というものが盛んに議論されるようになりました。世界の複雑さが増し、価値観が多様化する中で課題を解決するには、過去の成功体験や勘に基づく判断ではなく、根拠を持って論理的に考えることが有効だと考えられているためです。

そして数学は、この「論理の力」を伸ばす学問です。実際、学習指導要領においても「数学的なものの見方・考え方」「論理」という言葉がよく登場します。

(前略)「数学的な見方・考え方」は,数学的に考える資質・能力の三つの柱である「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」及び「学びに向かう力,人間性等」の全てに働かせるものと考えられる。さらに,「数学的な見方・考え方」は,数学の学習の中で働かせるだけではなく,大人になって生活していくに当たっても重要な働きをするものと考えられる。

引用:文部科学省|平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等「中学校学習指導要領解説」(数学)

数学は「勉強しても、役に立たないよ」なんて言われることが多い科目ですが、いえいえ、そうではありません。数学で身につけられる「論理の力」は、実社会での課題解決に直結する実学的な学問なのです。

そして論理の力が、もっともシンプルに表現されたのが計算です。順を追って道筋を作り、解に辿り着くという過程を論理と言わずして何と言うでしょうか。計算を通じてお子さんにつけてあげたい力、それは論理の力なのです。

数学の力を伸ばす計算トレーニングのコツ

計算トレーニングでは過程一つひとつの「理解」が重要
計算トレーニングでは過程一つひとつの「理解」が重要

計算トレーニングは、やり方次第で数学の力を見違えるほど伸ばすことができます。ポイントは3つ!手近な計算問題を持ってきて、お子さんと一緒にやりながらコツをつかんでいきましょう。

数学の力を伸ばす計算トレーニングのコツ

(1) 公式は覚えてはいけない

正確には「公式は、その字面を丸暗記してはいけない」ということです。最終的には覚えるのですが、「なぜその形になっているのか」「どういった場面で使うのか」を理解してから覚えてほしいのです。

「なぜその公式はその形なのか」理解する

たとえば展開・因数分解の公式に、次のようなものがあります。

a² + 2ab +b² = (a+b)²

左辺の真ん中に注目してください。「2ab」には、なぜ「2」がついているのでしょうか?

それは右辺の「 (a+b)²」 を実際に計算してみると分かります。

 (a+b)² =(a+b) (a+b)
    =a2+ab+ba+b2
    =a2+ab+ab+b2
    =a2+2ab+b2

元の公式の左辺と同じ形になりました。

2つ出てきた「ab」をまとめたのが「2ab」だということですね。

これは分かりやすい例ですが、公式は「なぜその形になっているのか」を理解しておくことがとても重要です。万一、公式をど忘れしても、導出の過程を理解していればその場で導くことができます。しかし字面だけを丸暗記していたのでは、忘れてしまうとどうしようもありません。

「その公式はどういう場面で使えるのか」も覚える

公式は「どこで使うか」という情報もセットで覚えておくことが大切です。使うべき場面を覚えておかなければ、せっかく覚えた公式も威力を発揮できません。

中学生に多いのは、「変化の割合=yの増加量/xの増加量(xの増加量分のyの増加量)」と呪文のように覚えているにも関わらず、一次関数の問題に当たったときに、適切に公式を思い浮かべられないこと。これでは何のために覚えたのかわかりません。

公式を覚える際は「なぜその形なのか」「どんな場面で使うものか」を、セットで覚えるようにしてください。

(2) 式変形は行った操作を説明できるように

上の行から下の行へと計算を進める際、1行ごとに「どんな操作をしたのか」説明できるかも確認してみてください。この視点は、自分がいま何を求めようとして・どんな計算をしているのか、途中でわからなくなってしまうことを防いでくれます。

特に(カッコ)が多くて長い計算や、√ (根号)記号の入った計算、またπ(パイ)や r (半径)など、記号が多い計算は要注意。上の行から下の行に移るときに、何をしていたのか迷子になりやすいためです。慣れるまでは、1行計算が終わるごとに、上の行と見比べて「今、何をしたのか」振り返ってみると良いでしょう。

(3) 途中式は、はじめは全部書く!慣れたら省略してOK

途中式はどの程度書くべきか、というのはさまざまな議論があるテーマです。

テストや入試では制限時間がありますから、お子さんがしっかり理解できる程度には省略できるよう練習しておくことは大切です。

ただし、計算トレーニングの初めから省略しようとしなくてOKです。特に計算が苦手、慣れていないお子さんは、省略しなきゃ!と思うとそちらにばかり意識が向いて、肝心の計算がおろそかになることがあるからです。

計算トレーニング初期は、「全部書く」くらいでちょうど良いでしょう。1行1行、何をやっているのかを考えながら丁寧に進めます。「さすがにこれは書かなくてもできる」と気づいたところで、徐々に省略していけば十分です。

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文章問題も怖くない!計算からレベルアップできる勉強法
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ここからは、計算トレーニングから文章問題まで、無理なくステップアップしていける勉強法を紹介します。

トレーニングで身につけた計算力を文章題へ応用するためには、問題演習の順番を工夫するのがコツです。

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(1) 教科書の例題・練習問題レベルを反復する

まずは計算トレーニングです。教科書の例題・練習問題レベルの計算問題を、「わかった!」「もう大丈夫!」と実感が持てるまで繰り返しましょう。

問題集を選ぶ際は、「基礎」と書かれているものがおすすめです。「入試」「実戦」と書かれているものは、応用問題ばかりが収録されていることが多いので、この段階では避けた方が無難です。

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(2) 教科書の章末問題の計算に取り組む

例題や練習問題がマスターできたら、教科書の章末問題に取り組んでみてください。ここまではまだ計算問題だけ進めます。

もし計算練習を進める中で、不安な点やよく分からないところが出てきたら、必ず復習しておきましょう。必要に応じて前学年までさかのぼることも大切な勉強です。

(3) テストの「第2問」レベルの1行問題に取り組む

計算問題のレベルを徐々に上げます。教科書の例題・練習問題から章末問題へと進んだ次は、「入試の第2問レベル」の計算問題に入ります。

高校入試の数学では、第1問は基本的な計算問題・第2問がやや複雑な計算問題という構成になっていることが多いのです。1行程度の問題文で条件が与えられることもあり、計算から文章題へのステップアップにピッタリです。

◎ 数学 第2問の例(神奈川県)

引用:神奈川県教育委員会|令和3年度 共通選抜 学力検査問題『数学』問2

数学 第2問の例(大阪府)

引用:大阪府教育委員会|令和3年度一般入学者選抜 学力検査問題『数学』問2

(4) 解説は一行一行を熟読し、説明できるレベルを目指す

さてここで、答え合わせの仕方を確認しておきましょう。

数学の答え合わせは、計算結果と正解を照合するだけでは足りません。大切なのは解説を熟読すること!特に教科書の章末問題レベルの問題や、入試の第2問レベルの問題は、解説も丁寧に読み、解き方の道筋や考え方を理解しましょう。

解説を読み、気づいていなかった着眼点や、なるほど!と納得したヒントなどは、ノートにメモします。ただ読むだけよりも、メモに書き残した方が理解が深まり、記憶にも残りやすくなるからです。

解き方や道筋を理解する、このひと手間が、数学的な思考回路や発想を育ててくれます。「数学はセンス」という人は、このひと手間を意識せずにできている人なのです。よって計算トレーニングに使う問題集は、解説が充実しているものを選んでくださいね。

(5) いよいよ文章題にチャレンジ!

計算トレーニングもかなりレベルアップしてきました。入試の第2問レベルが解けるようになったら、いよいよ長い文章題にチャレンジしましょう。

学校ワークや多くの問題集には、問題のレベルが表示されています。まずは「A問題(基本)」からはじめ、徐々にB問題、C問題とステップアップします。この時も、解説を一行一行熟読し、自分に足りない発想を補っていく、という視点は忘れないでください。

また問題を解いた後は、「こういう問題は/こんな風にすれば解ける」と問題を分類していくのもおすすめです。中学数学の問題には出題パターンというものがあり、問題を類型化できるからです。

知識がバラバラなままでは、どんなに問題演習をしても数学が得意にはなれません。問題を見て初めて解き方を考えるのではなく、「こういう問題は/こう解く」という構造を見つける意識で頑張っていきましょう。

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計算ミスやケアレスミスが多い場合の対処法

ミスは「起きるもの」として対処すると撲滅できる
ミスは「起きるもの」として対処すると撲滅できる

計算トレーニング中、計算ミスやケアレスミスが多くて悩むこともあるかもしれません。でも大丈夫、ケアレスミスはなくせます!対処法をまとめました。

(1) 計算ミス・ケアレスミスが起きる原因

計算ミスやケアレスミスは、不注意から起こることがほとんどです。そもそも解けなかったり、理解が間違っていたものはケアレスミスではありませんので、区別しておきましょう。

「計算ミスなんてするはずがない」「気を付ければ起きるはずがない」という思い込みや、時間がなくて焦る気持ちがわずかなミスにつながるもの。次に紹介する勉強法を取り入れ、ミスゼロを目指しましょう。

(2) 計算ミスをなくすおすすめ勉強法

計算ミスをなくす勉強法のコツは、次の3つです。

ミスの傾向を把握する

いつもどんなミスをすることが多いのかが分かれば、注意を向けるべき箇所も明確になりますね。「ミスを記録するメモ」を用意し、どんな計算ミスをしたか、書き残していきましょう。「符号を逆にした」「√ を書き忘れた」「問題の数字を見間違えた」といった具合です。

これを数週間続けると、どんなミスが多いか傾向が見えてきます。そこが弱点!勉強中、意識的に気を付けるようにして、ミスを防いでいきましょう。

計算は「=(イコール)」を揃えてまっすぐ書く

ノートの使い方にも一工夫を加えましょう。イコールは縦に揃え、行はまっすぐ書くことを徹底してください。何を書いたか判読しにくい文字は、計算ミスの元凶です。特に累乗など、小さな数字は見落としやすいため、意識してハッキリ書くようにします。

疑いの目で見直しをする

疑いの目で見直しをする、とは「ミスがある前提で見直す」という意味です。「間違いがあるかもしれない」と思いながら見たほうが、ミスを発見しやすいですよね。反対に「きっと大丈夫」と思って見ていると、目の前のミスも見逃してしまう…、というのは親御さんも経験あることではないでしょうか。見直しの視点を変えるだけで、ミスが見つかりやすくなりますよ。

(3) よく使う数値変換は覚えるとスピードアップ!

計算トレーニングは、解法の暗記をしてもダメと先に書きました。とはいえ試験時間の制約はあります。時間を節約するために、12×12=144、√24=2√6 といった、よく使う単純計算は覚えてしまうのもおすすめです。計算回数を増やすほどに、ミスが起きる可能性も高まります。単純な計算は覚えてしまい、計算ミス削減と時間節約を両立させましょう。

まとめ

計算は数学の土台となる、とても大切な勉強です。つい、応用問題や文章題に目がいきがちですが、それらが解けない原因が計算力にあることも多いのです。正しい計算トレーニングを積み重ね、数学力の底上げを図っていきましょう。

ただし計算トレーニングは、結果が出るまでに時間がかかることもあります。反復が大切な学習でもあるため、お子さんが途中で嫌になってしまうことも。

そんな時は、ぜひ塾に相談してみてください。塾は専用の計算トレーニングメニューや教材を持っていることも多く、お子さんの状況にあわせて適切なフォローを行ってくれます。計算の力が付くと数学全体への自信につながり、もっとやりたくなるという好循環が生まれることも期待できますよ。

塾探しの窓口を使うと、お近くの塾が簡単に見つかります。一日も早くお子さんに合う塾と出会い、計算トレーニングをスタートさせましょう!

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この記事を書いた人

塾探しの窓口編集部

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